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次に立命館では、1年次から「基礎演習」が設置されているのも注目できる。内容は徹底したディベートである。具体的なテーマをめぐって是か否かに分れて討論が繰り広げられるという。これは恐らくアメリカの大学をモデルにしたものであろう。たしかに一歩間違えると「知的なゲーム」に陥る危険性はあるものの、社会的経験が全くなく、恐らく政策課題など真剣に考えたことのないであろう18歳の学生に、政策マインドを身につけさせるためには、単なる一方通行的な講義よりは効果的かも知れない。
先にSFCの個所で慶應の総合政策学部が経済学主導型であるとするなら、立命館は政治学主導型であると述べた。これは政治学の専任教員が8名と多く、政策科学部設立の際にも、当時法学部に所属していた政治学の若手教員たちが中心的な役割を果たしたこと、さらに先の政策科学入門が政治学の教員によって担当されていたり、学部長が政治学者であることなどからも明らかであろう、したがって、科目のタイトルは同じでも、内容が慶應とはかなり変わっている。設置科目をみても、政治過程論(政策過程論に加えて)、政治意識論、比較政治システム論、政治文化論、現代コーポラティズム論、現代国家論、現代政治理論、政策規範論などが並び、政治史・思想史のない先進的な政治学科といった印象さえ受ける。もちろん、慶應型と立命館型のどちらか一方が良いというわけではない。恐らく、今後設立されるであろう政策系学部は両者の中間の路線を選択するだろう。
立命館のカリキュラム編成を単純化すると、1年次に政策科学基礎科目(「政策科学入門」など)と「基礎演習」、2年次に政策過程科目(「政治機構論」「公共政策論」「政策過程論」など)を重点的に学んだ後(政策過程科目は3〜4年次でも履修できる)、3年次からの政策展開科目では、「総合科学系」「地球環境系」「国際開発系」の3つの系から1つを選択して重点的に学習できるようになっている。例えば、「地球環境系」の設置科目には、「地球環境保全政策」「都市環境政策」「開発・環境法制」「国際環境政策」「資源・エネルギー政策」「環境計画論」「エコビジネス論」「環境情報論」「環境アセスメント」などがあり、その充実度は相当なものである。
以上、立命館大学の政策科学部について少し誉めすぎたかも知れない。先に同学部は政治学主導型であると言ったことを思い起こして欲しい。かつて政策科学系大学院が設置されたとき、俗に言う「進歩的な政治学者」「戦後民主主義世代の政治学者」の大方は政策科学のエリート主義的偏向、道具主義的理性の優位に対し批判的であった。そういった政策科学批判の急先鋒であった政治学者たちが、今や立命館大学政策科学部の中核を担っている。私は彼らに対し「転向した」との批判を向けるほどヤボではない。彼らは、彼らな

 

 

 

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